KSR GROUPについて

KSRとは

KSRグールプ

1916年にオーストリアの首都、ウィーンから1時間ほど西に位置するクレムス(Krems)で貿易商としてスタートを切ったのが、現在のKSRグループを率いるキルシェンホファー(Kirschenhofer)兄弟の曽祖父でした。ワイン畑と、それをはぐくむ風光明媚な土地として知られるクレムスで、地元に、そしてオーストア全土への商品供給を行う卸売商として、ウォータージャグや電子レンジのような家庭用電気などを中心に、ビジネスを広げてきました。モーターサイクルビジネスに手を広げたのは、現在のKSR グループの代表を担う兄弟、クリスティアン(1972年生)とミヒャエル(1974生)が会社を引き継いでからになります。クリスティアンが自分のバイクをカスタマイズしたりチューニングしたりとガレージワークに精を出す一方、ミヒャエルはオフロードバイクに親しみながら育ち、ともにモーターサイクルへの深い親しみを経験として家族経営の会社に入社したのです。彼らにとって、自分たちの商材にモーターサイクルを加えることは自然な流れでした。1996年からKSRグループはモーターサイクルビジネスをスタートさせ、徐々にディストリビューターとして経験を積みながら、販売網を築き上げていきます。その後2004年には自社ブランド、KSRを名乗るオリジナルモータ ーサイクルをOEM商材として導入。商社時代に培ったアジアの国々とのコネクションを生かし、またそのスタイリングはKTMのデザインを手掛けていることでも知られる同じオーストリアのKISKAに依頼してのスタートとなったのです。

OEMプロジェクトは、アジアにおけるKSRグループのネットワークを強化することにつながり、2008年には中国最大の二輪メーカーで、4輪のオフロードビークルも製造するCF Motoのインポーターとなるきっかけにもなりました。2013年までの間、KSRグループはそうしたディストリビューターとしてのネットワークを欧州全土に築くことに専念、最初の子会社(販売会社)をフランスに創業し、その後ギリシャ、イタリア、スペイン、スイス、ベルギー、オランダ、と各地 に子会社を広げていきます。モーターサイクルビジ ネスは2014年にRoyal Enfieldの輸入権を獲得したことでさらに広がり、ついでBenelli、 Malagutiと拡大していきます。OEM商品はKSRをグループ統合名の象徴とするため終了してオリジナル商品の製造をいったん途切れさせますが、2016年にイノチェンティと共同出資してLambrettaを再興させ、さらにMotronをかつてのOEM商品の受け皿としてオリジナルブランド化し、ラインアップを拡充していきました。

今日では、KSRグループは年間販売約70,000台と欧州最大のディストリビューター/ディーラーとなり、取り扱いブランドも10を超える一大モーターサイクルビジネスへと成長しています。日本におけるKSRグループのディストリビューターである当社、モータリストをはじめ、世界各国に45のインポーターを擁するネットワークを築き上げたのです。なお、KSRグループは祖業である白物家電を今もなお「スマートプロダクツ」として家電から健康器具、ガーデニング、小型モビリティなどに広げ、多くのラインアップを展開しているほか、マスクなどの衣料製品、さらにはその経験を生かしたブランディングコンサルタントやデザイン、エンジニアリング、マーケティングを請け負うビジネスを展開するなど、マルチプレイヤーとして活躍する企業に成長しています。

KSRにとってのBrixtonビジネスとは

2022年11月のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)。KSRのブースはBrixtonとMalagutiの2つの主力ブランドに集中しました。KSRにとっては、単なるディストリビューターからブランドを買い取って今後新しいラインアップを加えながら拡大していこうというMalagutiと、自身がスタートさせ、フルラインアップを擁するブランドとして世界のマジョリティーを目指すBrixtonの2つのブランドこそが、今後最も注力していくブランド、という象徴でもあったのです。

現在、BrixtonやMalagutiは、KSR社内のエンジニア・グループが、クレイグ=デント率いるオーストリアのデザイン・スタジオ、ライド(RIDE)と協働してモデルコンセプトからスタイル、クレイモデルの制作までを請け負っています。RIDEの代表、クレイグ=デント(Craig Dent)はKISKAで長らくモーターサイクルデザインのグループリ ーダーを務め、125Dukeをはじめとして世界で高い評価を得てKTM躍進のきっかけとなったモデルのコンセプト作りからスタイル、マーケティングまで一手に担ってきたことで知られています。KISKA在籍時からLambrettaのデザインでKSRグループとの縁がうまれ、自ら立ち上げたRIDEでKSRグループのスタイリングを統括することで、 Brixtonの統一感あふれる、個性的なスタイルが実現したのです。

KSRグループはBrixtonのために2017年、R&Dセンターを創設。ディストリビューターから真の意味でのメーカ ーへの脱皮の始まりでもありました。とはいえ、Ducati、Moto Guzzi、Triumphといった強力なライバルがひしめき合うヨーロッパで、新しいブランドが大排気量を含むフルラインアップを築き上げることは容易ではありません。まず、品質の確保は当然のことであり、新興とは言え他ブランドを超える品質(見た目だけではなく、作り込み含めた品質)が絶対であることは間違いのないところです。アジアのパートナー企業との協業でブランドを立ち上げたBrixtonにおいても、これを確保する為に「200-250ものモーターサイクル関連企業、メーカーがあるアジアの中で、我々のパートナーとなりうるメーカーはわずか5社に満たなかった」とミヒャエル=キルシェンホーファーが言うほどに、パ ートナーを絞り込んでのブランドスタートになりました。

さらに、歴史のない新興ブランドとしてのイメージ作りは極めて重要です。モーターサイクルスタイリングと、ブランドネーム、ブランドロゴを生かしながら作りこまれ、イメージリーダーとなった“X”は、こうして生まれました。ブランドを成長させるためのマーケティング戦略と、水冷500㏄ツイン・エンジンを搭載するクロスファイアとのつながりから、Brixtonのフルラインアップ戦略が始まったのです。これはまた、林立する小排気量中心の多くのヨーロピアンブランド(そのほとんどが製造は中国や東南アジア)とは全くスタイルを異にするものでもありました。

クロスファイア500

Brixtonはまた、ストリートモデルであり、ストリートスクランブラーである、というブランドポリシーを誇っています。今も、今後も、レーシングモーターサイクルやラリーマシンを作る予定は一切ありません。ブランドにとって最も重要なことは「自宅の庭さき、ガレージからスタートして、楽しく走り、良い思い出を残す。モーターサイクリングのすべてがそこに詰まっています。レースを否定するものではないし、例えばクロスファイア125ならそうしたポテンシャルも備えていますが、私たちが目指しているのは、美しいモーターサイクルで、素晴らしい走りを楽しみ、思い出を作ることなのです。このフィロソフィーを変えることはありません」とミヒャエル=キルシェンホーファーは語っています。

このコンセプトのもとに作りこまれた1200㏄の水冷ツインエンジンは、クロムウェルのトップレンジに搭載されました。36ヵ月の開発期間を経て自らの手で作りこまれ、同じエンジンを他社には供給しないという新型エンジンは、まさにこうしたBrixtonにこめられたKSRの想いが詰まったものでもあるのです。